第52回グルテンについての研究
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近年、小麦やライ麦などを原料とする製品に含まれるグルテンが注目を集めています。
グルテンは、小麦やライ麦などに含まれるタンパク質のグリアジンとグルテニンとを捏ね合わせることで生じます。パンやお菓子などを自分で作られる方はお分かりかと思いますが、パンなどの粘りや弾力を決めるのはこのグルテンです。
一方で、このグルテンは食物アレルギーの一種であるセリアック病などの原因になることが知られています。そして、食物アレルギーを持たない方々も、このグルテンを食べない(グルテンフリー)食生活が欧米を中心に広がっています。テニスのジョコビッチ選手らがこのグルテンフリーの食生活を取り入れたことから有名になりました。我が国でも多くの著名人がこのグルテンフリー食生活を紹介されています。
このグルテンは本当に身体に悪いのかという研究結果が本年5月に発表されました(BMJ (2017) 357; j1892)。この研究では110,017名を26年の長期に亘って調査し、グルテン摂取と冠状動脈性心疾患の発症との関連性が検討されました。図を見て頂くとお分かりのように、グルテンを1日どの程度摂るかによって5つの群に分け、各群の人たちがどの程度、冠状動脈性心疾患を引き起こすかを調べました。その結果、グルテンを一番摂らないレベル1の人たちに比べて、それ以上グルテンを摂る人たちは冠状動脈性心疾患のリスクが増えませんでした。少なくともグルテンの長期間摂取は循環器疾患リスクとは関連しませんでした。
今後もグルテンについては様々な研究が進んでいきます。小麦やライ麦製品をむやみに避ける必要はないようです。