コラム

第53回宇宙での食事

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  • sn

    七夕を迎え、夜空を眺めることも増えて来ました。都会では街の灯りが邪魔をしますが、七夕伝説のベガやアルタイルに、デネブを加えた夏の大三角を見つけるとちょっと得した気分になります。一方で、堀江貴文氏が関係する民間ロケットが発射されたとか、月の砂が2億円で売れたとか、空の話題には事欠かないひと月でした。

    さて、宇宙旅行も間近とも言われていますが、高度100kmをわずかに超えて、短時間、無重力状態を味わうだけならともかく、長期間の宇宙旅行(例えば、月への往復や宇宙ステーションへの滞在)では健康面に大きな負荷がかかります。宇宙では、この地球上では考えられないほどの放射線や酸化ストレスが存在します。このため免疫力が下がったり、無重力による骨や筋肉の喪失が起こったりすることが知られています。これら健康障害を防ぐために、宇宙での食事の重要性が再認識されようとしています。従来は、人間に必要とされる栄養素を必要な分量だけ如何に効率的に与えるかが宇宙食の課題でした。しかし、現在では、精製した栄養素では得られない微量の生物活性栄養素をどのように摂取するかが重要になっています(例えば、NPJ Microgravity. 2016;2:16029)。図に示すように宇宙で起こる6つの問題を解決するために、地球上と同じような食事が開発されようとしているのです。

    このことは、私たち、地球上に住む人間にも深い示唆を与えます。つまり、これは栄養表に示されている栄養素だけを精製して摂っていても健康は保たれないということです。私たちは「食品」の形で栄養を摂る必要があるのです。
    ちなみに、擬似宇宙食は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などでも販売しています。機会があればご賞味下さい。

    仕切り線

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