コラム

第54回秋に太っちゃう!

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  • sn

    まだまだ、暑さも残っていますが、暦の上ではすっかり秋です。朝晩の涼しさや空の高さがまた秋を実感させてくれます。秋といえば、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋といろいろありますが、最も身近なところでは「食欲の秋」ではないでしょうか。夏の高温多湿な環境の中で、減りがちであった食欲が秋に復活すること、あるいは実り多い季節を反映した言葉だと思われます。一方で、「食欲の秋」の結果、体重の増加が気になる季節でもあるようです。

     日本では、季節ごとの体重変動を測定した研究は近年ではサルでのみ発表されています。しかし、世界的にみると幾つかの詳細な研究が既に発表されています。これらの研究では、大体12月のクリスマス休暇前後の体重について調べています。その結果、表を見て頂いたらお分かりのように、ほぼすべての研究で秋から冬に掛けて体重が増加することが分かりました。私たちが感覚的に理解していることが数字で証明されたのです。体重の増加分は、0.4~0.9 kg程度です。1 kg未満ならちょっと安心ですが、期間が1ヶ月程度だということもお忘れなく。なお、これらの体重増加は成人だけに見られ、子どもや大学生などでは観察されません。

     これら秋に太る理由は、飢餓の歴史の中でヒトが秋から冬に掛けて食べる量が増え、エネルギー消費量が減ることによります。この理由として脳の活動(例えば、セロトニン分泌)を挙げて説明される場合もありますが、近年では、ホルモンが中心的な役割を担っていることが分かって来ました。それも、食欲調節ホルモンとして知られるレプチンなどではなく、甲状腺ホルモンなどが関わっているようです(Front Neuroendocrinol. (2015) 37:97)。

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