第55回AI(人工知能)で医療は変わるのか?
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近頃、たくさんの英語の略号が出て来て、「これって何?」という場面ばかりです。これらの略号に付いて行けないのは年齢かなってちょっと不安になります。
略号の中で最も良く耳にするのがAI(Artificial Intelligence;人工知能)です。AIを使ったコンピューターが将棋や囲碁のプロ棋士を破ったなどというニュースが頻繁に出て来て、毎回驚かされます。このAIでは人間が学習すると同じように機械に勉強をさせるもの(機械学習)あるいは人間が学習するのを機械で助ける環境を整えるもの(認知コンピューティング)、または2つの組み合わせで、人間が出来ない規模や速度で勉強を進めることが出来ます。
加えて、我が国でも開始した国民全体の情報を集中的に処理するビッグデータを用いると、そのAIの学習量は信じられないほどになって来ます。このAIは医療の分野でも今後活用が期待されています。特に、研究が進んでいるのが「がん」と「心臓や血管の病気」です。
既に、2016年8月には東京大学医科学研究所で抗がん剤による治療後、治療効果が出て来ない白血病の患者に対し、IBMが開発したWatson(ワトソン)というAIを使って患者のがんに関係する遺伝子情報を分析しました。その結果、その白血病が特殊なタイプで通常の治療では効果がないことが分かりました。この分析に必要だった時間はたったの10分でした。この結果を受けて患者の担当医は抗がん剤の種類を変更し、患者は数か月で回復するという画期的な結果をもたらしました。
現在は、この東京大学の他、国立がん研究センターなどでもAIを使ったがんの診断・治療が試みられています。厚生労働省も来年度にこのがん診断へのAI利用に46億円余りを予算要求しています。
「がん」の他に、世界的に進んでいるのが「心臓や血管の病気」の診断です。図のように日本全国のビッグデータを使うと非常に精度の高い診断が可能になります。このようなAIを使うと医師や技師が見落とす可能性がある小さな病変を見つけたり、個人差を考慮した治療が可能になります。将来は、家庭にAIがあれば病院に行く必要がなくなるかもしれませんね。