第58回 血栓と適度な運動
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心筋梗塞や脳梗塞からエコノミークラス症候群まで血栓という言葉をよく聞くようになりました。高齢化社会への突入で、心臓・血管系の病気が増えていることと共に、病院での検査方法も進歩しており、これまで見つけることが出来なかった血栓も見つかるようになり、話題が広がっているのだと思います。
血栓とは、血管の中に出来た血の塊のことです。これが血管を塞いでしまうと血栓症という病気になります。血栓が脳の動脈を塞ぐと脳梗塞、心臓の動脈を塞ぐと心筋梗塞になります。また、脚などの静脈に出来た血栓が突然流れ出して、肺の動脈を塞いで突然死などを起こすことをエコノミークラス症候群と言います。
血栓が出来るのは、(1)血管の障害、(2)血流の停滞、(3)血液状態の悪化のためです。(1)は、喫煙、高血圧、糖尿病などの要因によって生じます。(2)は長時間同じ姿勢を保ったり、固定具などで身体が外部から締め付けられた時に生じます。また、(3)は血液を溶かす成分が減ったり血液を固める成分が増えたりすると生じます。熱中症などもこのひとつになります。
この怖い血栓症の予防に運動が効果的であることが分かって来ました(Eur J Prev Cardiol (2014) 21(10), 1225-1232)。心不全の患者30名を2つのグループに分け、一方の15名は座っている生活、他方の15名は6ヶ月間、週3回、30分間の軽い運動を行なう生活を送って貰いました。その結果、運動をした場合に、血栓の原因となる血液を固める成分・フィブリノーゲン、炎症マーカーCRP(C反応性タンパク質)、および腫瘍壊死因子が低下しました(表参照)。この他にも活性酸素による障害も減っていました。
高齢になると気をつけたい血栓。軽い運動で防ぐことが出来るようです。生活の中に運動を取り入れたいものです。