第65回 秋です。空気について考えてみませんか?
-
今年の夏は暑かったですね。観測史上の最高気温も埼玉県熊谷市で観測されました(41.1℃;7月23日)。しかし、暑い夏もやがて終わり、秋がやってきます。気象庁によると、今年の秋の気温は北海道・東北では少し高めですがそれ以外では平年並みで落ち着くようです。さて、秋から冬にかけて雨が少なく乾燥すると、毎年問題になるのが空気の質です。昨年はPM2.5(微小粒子)濃度が大変に低かったので大きな問題になることはなかったのですが、今年は既にこの夏、中国や韓国でPM2.5が高く、日本にも秋から冬にかけて影響が出てきそうです。
このPM2.5が私たちの遺伝子にまで影響を与えるという研究が発表されました(Environ Pollut 230 (2017) 163-177)。私たちの遺伝子は棒状に固まって染色体になり、この染色体が24本、細胞の中の核に存在し、親から子へ遺伝情報を伝えています。図の左の写真は染色体です。この写真の中に4つの破線円があります。この部分をテロメアと呼びます。このテロメアは遺伝子を保護する役割を担っています。ちなみに、この研究でブラックバーン博士らは2009年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
この遺伝子の保護キャップであるテロメアがPM2.5によって磨耗することが右の図から分かります。それもPM2.5が高く、暴露回数が増えるほど磨耗の度合いが大きくなっています。つまり、PM2.5が遺伝子の保護キャップを壊すのです。この保護キャップが壊れると、がん化や老化が進むことが知られています。
今回はちょっと難しい内容でした。すみませんでした。ただ、今年の秋から冬は空気の質にも少し関心を持って頂ければと思います。