第68回 高齢者はお肉を食べるべきか?
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天高く馬肥ゆる秋が到来しました。秋の収穫直後の食べ物の美味しさは格別です。さて、先日、講演会で高齢者(65歳以上)は消化が悪いのでお肉を食べてはいけないのではないでしょうかという質問を受けました。様々な背景があろうかと思いますが、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」でも高齢者の望ましいタンパク質摂取量は20代の若者と変わらないことが示されており、タンパク質供給源としてのお肉は栄養学的に重要なのです。
調理されたお肉の消化については多くのことが研究されています(例えば、Food Funct. 2016; 15;7(6):2682-91)。食べ物全般では、図のように胃と小腸の上部(空腸)で消化されていることが報告されています。胃は食後4時間でほとんど空っぽになることがわかりますね。これら消化に関して年齢の差はありませんでした。一方で、胃の酸性度(pH)は高齢者の方が小さいことが分かっています(図では下に行くほど酸性度が大きい)。つまり、高齢者の胃酸は若い時に比べると減っているということです。
さて、これらを踏まえて、調理されたお肉について考えて行くと、お肉は最終的には約96%が消化されて、約60%が身体の中に吸収されることが分かりました。そして、この割合は年齢と関係ないことも判明しています。ただ唯一、ピルビン酸キナーゼという酵素だけが高齢者のお肉の消化で影響を受けるものでした。高齢者のお肉料理では、脂身を少なくする、食べやすくするために隠し包丁を入れる、などの工夫をして是非、貴重なタンパク質源を積極的に摂って頂きたいものです。