コラム

第69回 イチョウ葉エキスと認知障害

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  • sn

    何かと話題になる認知障害ですが、厚生労働省の調べでは、認知症患者の数は462万人(2012年)と発表されています。さらには、認知障害までは行かない前段階の軽度認知障害の人は、65歳以上の4人に1人と推計されています。解剖学的に見ても、脳の重さは18〜20歳が最大で、それ以降は減少の一途を辿ることからも高齢になるほど脳の機能が衰えるのは自然の摂理かもしれません。

    しかし、超高齢化社会の今、実生活の支障を避けるために認知障害を少しでも遅らせねばなりません。認知障害の6割を占めるアルツハイマー病に対する薬は既存薬だけでなく、たくさんの候補物が開発されています。しかし、これらは認知障害が出てからしか利用できません。予防的には利用できないのです。

    イチョウの葉は認知障害やアルツハイマー病に使用されている自然物質です(ドイツでは薬として使用されていますが)。未だにその効果は研究の途上ですが、各国で臨床研究が進んでいます。中国では2608人のアルツハイマー病あるいは軽度認知障害患者を対象とした21件の試験で評価がなされています(Curr Top Med Chem. 2016;16(5):520-8)。イチョウ葉エキスを従来の薬と一緒に24週間(半年)用いた場合に、認知機能の改善や日常生活の活動に改善が見られました。しかし、その効果は一貫性がなく、今後、更なる研究が必要であることが判明しました。

     一方で、イチョウの葉に含まれる有効成分であるビロバリド、ギンゴリドA及びBなどが本当に脳まで到達しているのかというのは昔からの疑問でした。それをラットで証明したのが図です(Planta Medica 2011; 77(3): 259-264)。確かに、口から摂取して1時間後には脳に到達しています。次に、どのように脳を活性化するかです。次回はその紹介をさせて頂きます。

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