第71回 梅干しは身体にいいのか?
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寒い冬が続きました。北海道からは氷点下30℃に達したとの報も入っていました。しかし、一方で、着実に春は訪れていて、この原稿を書いている2月10日には私の研究室の横の梅の花が咲き始めました。梅の花を見ると6月の梅の実の収穫が楽しみになります。
梅の実はそのままでは食味が悪く、青酸配糖体も入っていることから梅干しの形にして食べます。保存条件さえ良ければ非常に長期間食すことが出来る食べ物で、奈良県には約500年前の梅干しが現存しており、今でも食べることが出来るそうです。さて、この梅干しですが、身体に良いとされています。しかし、本格的な梅干しでは塩分濃度が20%近くになりますから、身体に悪いという印象を持っている方も少なくありません。
しかし、近年の研究では、梅干しの抗菌性効果や防腐効果に加えて、胃腸の働きを助けることも報告されています(World J Gastroenterol (2015) 21(26), 8170-77)。昔から伝えられている抗菌作用としては、梅干しの中に6〜7%も含まれるクエン酸が中心的な役割を果たします。一方で、腸内細菌に対する作用としては梅干しの中のフェノール化合物と呼ばれる物質が重要だということが分かって来ました(Biol Pharma Bull (2018) 41(2), 208-212)。図では分かり易くするために3種類の腸内細菌しか示していませんが、実際にはほとんどの悪玉菌に対して殺菌効果を持っていました。また、その効果も抗生物質のような完全な殺菌ではなく、減菌であることは自然な腸内環境改善をもたらすことが出来ます。
早春に花を愛で、初夏に実りをもたらす花兄を私たちの食生活にどんどん取り入れていきたいものです。