第73回 納豆は身体に良いのか?
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春の芽吹きと共に、食卓に様々な食材が並ぶようになりました。栽培技術や保存技術が進んだ現代でも、季節の露地物の美味しさは格別です。
さて、今回も和食素材・納豆です。大豆は生産国がアメリカやブラジルであることから一部には西洋作物と思われていますが、原産は日本や中国などの東アジアで、日本では縄文時代の遺跡からも出土しています。
大豆は畑のお肉と言われるくらいに良質なタンパク質を持っています。今回は、この大豆の加工品のひとつである納豆の脳卒中への効果について、岐阜県高山市で調べられた脳卒中研究を紹介したいと思います(Am J Clin Nutr (2017) 105(2), 426-431)。納豆については、含まれる酵素・ナットウキナーゼが血管の詰まり(血栓)を溶かす作用が知られています(私も昨年9月にイギリスで発表して来ました)。が、一方で、ワーファリンなどの薬を服薬しておられる方はその作用を弱めるために摂ってはいけないことも報告されています。
この高山市研究では35歳以上の男性13,355人および女性15,724人が参加し、1992年から続けられて来ました。この方々を、納豆を食べる量によって4つの群に分けて調べると、脳卒中全体による死亡危険係数と統計的に有意に関係していました(図参照)。大豆そのものが良いのかと言うとそうではなく、大豆や大豆イソフラボンの摂取量との関係はありませんでした。納豆にすると予防効果があったのです。ただし、明らかに納豆の摂取と脳卒中との関係があるのは1日食べる量が平均7.3gの大量群です。市販の1パックは約50g程度ですから1週間に1度は納豆1パックを食べると良いのかもしれませんね。