第74回 みかんの皮は糖尿病に有効?
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春が深まり、初夏の訪れさえ感じる季節となって来ました。
私ごとですが、ベランダに鉢植えしているみかんの木にも可憐な白い花が咲き始めました。
秋に結実するみかんを楽しみにしています。
みかんの皮は古来より乾燥させて「陳皮」として珍重されて来ました。陳皮は漢方薬の原料で胃腸の働きや咳を抑えるために用いられて来ました。このみかんの皮から抽出した物質が、2型糖尿病に有効だったという報告が出て来ました(Biomed Pharmacother (2017) 94:197-205)。
この研究は、ニコチンアミドとストレプトゾトシンという薬物を注射して膵臓の機能を弱めることによって2型糖尿病を発病させたラットを使って行われました。このラットは徐々に2型糖尿病になっていきますが、1日2回、4週間にわたってみかんの皮抽出物を食べさせ続けると、本来下がり続ける糖尿病の指標であるインスリンとCペプチドの数値が下げ止まりました(図左及び図中参照)。つまり、膵臓が保護されたのです。インスリンは、血液の中の糖分(血糖)を使ったり、肝臓や筋肉に貯蔵する役割を果たします。
従って、膵臓の機能が正常であれば肝臓のグリコーゲン(糖を貯蔵したもの;お菓子のグリコ社はグリコーゲンの研究をしていたのでグリコと命名)は増加します。みかんの皮抽出物はこの肝臓のグリコーゲン量も増やすことができました(図右参照)。
みかんの皮には2型糖尿病も抑える作用が確認されました。私たちの身近にはまだまだ利用されず、捨てられている身体に良い物がたくさんあります。みかんの花を見ながら、もっと多くの研究をしたくなりました。