コラム

第77回 腸内微生物を食べ物で変える(1)

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  • sn

    腸内細菌が熱い!のです。これは研究の世界での話です。近頃、乳酸菌が流行っているのも、この腸内細菌研究が進んでいることも貢献しています。私たちの腸内には普通1〜1.5 kgの細菌が住んでいます。ここで「細菌」と言っていますが、実際には細菌、古細菌、真菌、原生動物、ウイルスなど1000種以上の微生物が混じっており、一種ではないので「細菌叢(さいきんそう)」あるいは「腸内フローラ」と呼びます。この腸内の細菌の種類と量は個々の人によって決まっています。従って、身体の中の指紋とも呼ばれています。
     この腸内細菌が便通などと関係していることはよく知られています。しかし近頃ではもっと研究が進んでいて、この腸内細菌は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、喘息、メタボリックシンドローム、血管や心臓の病気である心血管疾患、そして自閉症スペクトラム障害などの神経発達状態まで関係していることが報告されています。今月はこの腸内細菌がどこからやってくるのかについて書かせて頂き(J Vet Intern Med 2018; 32, 9-25)、次回、食べる物でこの腸内細菌を健康に変えることについてハーバード大学の報告を紹介させて頂きます。
     さて、図にあるように腸内細菌は出産と同時に母親から赤ちゃんに移ります。従って、母親と子どもはほぼ同じ細菌を持っています。出産後からは母乳を含めて食べる物で腸内細菌が成熟して行きます(図の縦の流れ)。一方、図の右の流れは栄養失調などの場合ですが、日本では栄養失調はほとんどありません。しかし、未熟児や帝王切開で生まれた場合には腸内細菌が成熟しない場合もあります。右の流れに行くこともあります。

    仕切り線

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