第78回 みかんの皮は漢方薬
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秋を迎えて、店頭にもみかんが並ぶようになりました。私がベランダで育てているみかんは、先日の関東を襲った台風で1個を残して全て落ちてしまいました。さて、このみかんの皮は、オレンジピールを使ったお菓子や甘煮金柑などではよく食べられますが、昔から、漢方薬としても利用されて来ました。陳皮と呼ばれ熟したみかんの皮を陰干しで乾燥させたものです。胃腸薬や咳止めとして用いられてきました。そして、現在、このみかんの皮の効能が見直され始めています。
今回ご紹介するのは、抗うつ薬の副作用に関する研究です。複雑な社会を背景として、うつ病患者は増えており、治療を受けている人は80万人弱、これは同じ精神科の病気である統合失調症と肩を並べるものです。さらには潜在的な患者は200万人を越えるとも言われています。さて、このうつ病に用いる抗うつ薬ですが、副作用が多いことでも知られています。一般的には、眠気や消化器症状ですが、近頃問題となっているのは男性の勃起不全です。これにみかんの皮が効くか否かの研究が発表されました(Andrologia 2019; 51(9): e13371)。研究は、ネズミを使って、何も処理していない場合(コントロール)、抗うつ薬であるパキシルを5mg/kg投与した場合とこれに加えて勃起不全治療薬バイアグラを5mg/kg与えた場合、あるいはみかんの皮を50mg/kgと100mg/kg与えた場合で行われました。効果は1時間の性行動回数で計られましたが、図に示すように、抗うつ薬は性行動を抑えますが、それは、バイアグラ、あるいはみかんの皮によって回復しました。これは、ネズミの体の中で性に関する酵素や物質がみかんの皮によって回復したためです。今回のみかんの皮のように東洋医学を西洋医学によって証明していくことは今後も進展していくでしょう。