コラム

第79回 酒粕は肝臓を守る

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  • sn

    今回も日本食シリーズです。酒粕は米の酵母発酵の副産物で伝統的な日本食です。近年の大規模な日本酒造りでは高熱糖化という方法が採られるため酒粕は出来ません。さて、この酒粕の栄養価に現在注目が集まっています。たとえば、酒粕の5%は食物繊維ですので大変にお腹に良い素材です。また、酒粕そのものだけでなく、魚や肉を酒粕に漬けると痛風の原因になるプリン体を減らすことができ、更には旨味も増すということも報告されました(Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 2018; 37(6):348-352)。
     さて、この酒粕ですが、現在、世界中で増え続けている慢性肝臓疾患の原因の一つである非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に効果があることが報告されています(Lipids Health Dis 2017 Jun 3;16(1):106)。この研究ではヒト肝癌由来の細胞であるHepG2細胞を用いて、酒粕抽出物がこの肝臓の細胞が脂肪を取り込むのを抑えるかどうかを調べています。図に示すように、脂肪がない場合には酒粕抽出物は何ら影響を与えません。一方、脂肪がある場合には肝臓の細胞にはトリアシルグリセロール(中性脂肪の主成分)が溜まりました(右から3番目)。しかし、そこに酒粕抽出物を0.1 mg/mL及び1.0 mg/mLを加えると、1.0 mg/mLの場合には肝臓の細胞へのトリアシルグリセロールの蓄積は抑制されました。なお、この結果はネズミに口から4週間、酒粕抽出物を摂取させた場合にも同様でした。
     酒粕の成分の一部には、皮膚の黒ズミなどの原因になるメラニンを作るチロシナーゼを阻害する成分も含まれています。酒粕は化粧品などにも使われていますね。

    仕切り線

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