第85回 手洗いの必要性
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世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で、手洗いやうがいの重要性が再認識されています。通常、人の手には、ブドウ球菌や好気性胞子形成菌が付着しています。しかし、子どもたちを調査した研究(J Prev Med Hyg 2019; 60(2): E103-E108)では、これらの菌以外にも日和見感染症の原因になるアシネトバクター種(36.5%)、院内感染症の原因となるシュードモナス種(4%)などが検出されています。なお、男女間では男性の方が多くの細菌を持っています。
さて、私たちの手洗いには3つの方法があります。(1)オゾン水:水道水で洗う方法、(2)アルコール殺菌:アルコール消毒剤を噴霧して手を擦り合わせる方法、そして(3)石鹸手洗い:石鹸を使って手を洗う方法です。なお、アルコール消毒剤はアルコールを60〜90%含んだもので、薬局で買った100%アルコールはそのまま使えません。必ず水を4分の1加えて下さい。さて、この3種の手の洗い方を比較した研究があります(J Hosp Infect 2020; pii: S0195-6701(20)30113-4)。試験参加者55名に最初に大腸菌の液に手につけてもらうと、各々の手には300000 CFU/mLの菌が付着しました。これを上記の3つの方法で手洗いをしてもらった結果が図です。図に示すように、どの消毒方法によっても大腸菌は1%以下に減りました。確かな効果があります。一方で、手洗いの方法を比較すると、(3)石鹸で手を洗う方法が最も有効でした。ちなみに、図の上に付いている縦棒は標準偏差といい、個々の結果のばらつきを表していますが、この縦棒がアルコール殺菌では異常に長いことに気付いて頂けると思います。そうです、アルコール消毒液を噴霧して手を擦り合わせるのは意外に難しく、十分に手指を擦り合わせないとその効果は薄くなってしまうのです。
今回は、細菌に関する研究でしたが、ウイルスも同様です。こまめな手洗いとうがいに努めましょう!