コラム

第94回 細菌やウイルスの感染をラクトフェリンで守る

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  • sn

    新型コロナウイルスは、感染者数は世界で1億2000万人に及び、死亡者数は260万人にも及んでいます。これから北半球が暖かくなり雨も増え、加えて、ワクチン接種が進むと、少しずつ終息に向かっていくだろうと予想されます。この新型コロナウイルスも当初は呼吸器(肺など)の病気として捉えられていましたが、現在では全身に関与する疾患として認識されています。そのような中で、人間の非特異的防御システムの一部であるヒト分泌物・糖タンパク質であるラクトフェリンが予防的役割と補助治療に役に立つのではないかと関心が高まっています(Int. J. Mol. Sci. 2020, 21, 4903)。ラクトフェリンは微生物(例えば細菌)やウイルスの感染に対して重要な役割を果たし、さまざまな粘膜表面に抗炎症効果を発揮することが知られています。ラクトフェリンは、新型コロナウイルスの感染と炎症に対して、呼吸器と腸の粘膜の自然な障壁として機能するか、ウイルスのコロニー形成に関連する鉄の障害を回復させる可能性があることが報告されています。
     さて、人工呼吸器を装着している大人では口腔を清潔に保つことで肺炎が防げることが分かっています。これを新生児(ただし、妊娠28週より前に未熟児として生まれ、生後7日から10日の間に人工呼吸器を装着している乳児)を対象にし、ラクトフェリン水と滅菌水で口腔ケアをした場合を比較した研究がなされました(Contemporary Clinical Trials 35 (2013) 33–39)。図に示すように、ラクトフェリン水を用いた口腔ケアはエアリーク症候群(肺から空気が漏れる気胸と思って下さい)の患者数、新生児人工呼吸関連肺炎の患者数、それを1000日あたりに換算した患者数のどれもが滅菌水で口腔ケアした場合に比べて少なかったのです。ラクトフェリンの抗菌・抗ウイルス効果は今後も注目が集まりそうです。

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