第97回 えごま油とうつ病
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ワクチン接種が進み、このエッセイを書かせて頂いている時点で、国民の1割に接種が終わっています。ワクチンの供給が十分となった現在では、如何に短時間で国民の過半数に接種するかが課題となりました。
さて、近頃、再びオメガ3系不飽和脂肪酸(アルファ-リノレン酸)に注目が集まっています。自宅で過ごす時間が増えるにつれて、皆さん、ご自身あるいはご家族の健康について関心が高まっているのだと思います。さて、ここではオメガ3系不飽和脂肪酸(油としては、えごま油や亜麻仁油)とうつ病との関係についての研究を紹介させて頂きたいと思います(Transl Psychiatry 2019; 9: 190)。この研究では、オメガ3系不飽和脂肪酸摂取群で1089名、コントロール群で1071名を対象としてうつ病のスコアを比較しています。この研究の目新しいところは、オメガ3系不飽和脂肪酸だけでなく、この仲間のドコサヘキサエン酸 (DHA) とエイコサペンタエン酸 (EPA)の効果も確認していることです。図はそれぞれの群の標準化平均差を示しており、数値が低いほどうつから遠い普通の状態を示しています。つまり、オメガ3系不飽和脂肪酸(えごま油)を1日1g以上摂っている人たちは明らかにうつ病になりにくいことが分かりました。これはEPAでも同じですが、DHAでは効果がないことが示されました。脳内にはDHAが大量に存在して機能していますが、そのものを摂取するのではなく、それらの原料であるオメガ3系不飽和脂肪酸(えごま油)やEPAを摂取することが重要であることが分かりました。何れにせよ、良い油を長期間、摂っていくようにしましょう。