第104回 PM2.5と眼の障害
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新型コロナウイルスのため、世界中で在宅時間が増えました。ある調査によれば、約70%の人が、在宅時間が増えたと回答しました。このような中で、家の中の環境が注目を集めています。私が7年前から研究しているPM2.5(直径が2.5μm以下の粒子;2.5μmは1mmの400分の1)も各国が規制を強化しようとしています。先月はthe Seoul International Forum on Air Quality Improvementで、今月は the International Symposium on the Accumulation and Reduction of Particulate Matterでそれぞれ講演して来ました。
さて、このPM2.5ですが、呼吸器(肺)を通じて、循環器(血管や心臓)を詰まらせると恐れられていますが、PM2.5は外界に晒されている眼にも悪影響を及ぼすという研究が発表されました(Ecotoxicology and Environmental Safety, 207, 1 January 2021, 111306)。この研究では、眼、特に角膜(私たちの瞳の黒目にあたる部分です)の障害について、詳しい実験を行なっています。この研究では様々な濃度のPM2.5を培養したヒト角膜上皮細胞に添加する実験と3ヶ月間マウスに点眼する実験を行いました。図に示すように、培養したヒト角膜上皮細胞に、PM2.5を加えると、加えた量に従って、死んでいくことが分かりました。また、マウスの点眼実験によって、この細胞死に活性酸素などが関与することも明らかになりました。
PM2.5は目に見えず、また、多くは大陸からやって来ますので、我々が自ら防ぐのは難しいことが分かっています。しかし、これから春先までのPM2.5が増える季節では、外出から帰った時に、玄関前で着衣を振るうだけでもPM2.5を家の中に持ち込まずにすみます。ちょっと気をつけましょう。