第107回 食物繊維と腸内環境
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近頃、食物繊維に関する問い合わせが増えています。私が、食物繊維が豊富なナッツを推奨しているという理由があるのかもしれません。食物繊維にかかわらず、腸内環境を改善することは多くの病気に関連があるという報告がなされています。例えば、よく知られた血糖値やコレステロール値だけでなく、精神科領域では、うつ病は、腸内環境を整えることで改善が見込めることはよく知られています。この腸内環境を手っ取り早く改善する役割を果たすのが食物繊維です。食物繊維は「人の消化酵素で分解されない成分」ですから、本来は栄養とみなされませんでした。しかし、近年になって、その役割が見直されています。昔は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)では、食物繊維を摂らない食事が推奨されていました。これは腸の活動を休めるためでした。しかし、現在では、腸の狭窄がない場合には積極的に食物繊維を摂ることが勧められています。特に、潰瘍性大腸炎ではその効果が大きいとの報告もあります。
実際に、多くの疫学研究は、全粒穀物、マメ科植物、野菜、果物などの未精製の全食品の摂取を通じて、食物繊維が胃腸の健康に及ぼす利点を一貫して示しています。そして、食物繊維に関する機構的研究および臨床試験は、腸に対する有望な調節効果(例えば、消化および吸収、通過時間、便形成)および微生物効果(腸内細菌叢の組成および発酵代謝物の変化)に重要な影響を与えると報告されています(例えば、Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021 Feb;18(2):101-116)。図に、食物繊維の分類と役割をまとめてみました。
日々の食事によって、腸内環境は変えることができます。毎日の食事から健康になっていきたいものです。