コラム

第110回 フラバンジェノールと熱ショック

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    今年は梅雨も早くに明けて、暑い日が続いています。人間を含む哺乳類はカエルなどの変温動物よりも高い体温を保っています。これは哺乳動物の運動機能や知的活動を高めています。しかし、その体温が少し高くなると私たちの身体は大きな不具合を生じさせます。特に、41.5℃を超えると熱そのものが生存に関わって来ます。さて、私たちの細胞は、高温に曝されると応急的な反応を示します。その一つが、細胞を守るために産生されるヒートショックプロテインです。特に、最も守るべき臓器である脳で作られるヒートショックプロテインは脳の熱による障害の指標になります。この脳への熱の影響を抗酸化物質・フラバンジェノールが防ぐが否かの研究がなされました(J Therm Biol. 2016; 60:140-8)。この研究では、フラバンジェノールを14日間、ヒヨコに与え続けました。その後に、ヒヨコを高温状態(40℃)に3時間曝して、脳内のヒートショックプロテイン遺伝子がどのように変化するかが測定されました。その結果、図に示すようにフラバンジェノールを連続的に投与されたヒヨコの脳は熱に対する耐性が高くなり、防御反応であるヒートショックプロテイン遺伝子が作られませんでした。また、その作用は投与したフラバンジェノールの量に比例して効果高まりました。この効果は脳だけでなく、肝臓でも観察されています。高熱は私たち哺乳動物にとっては大きなストレスです。フラバンジェノールはこのストレスを緩和してくれるのです。
     最後になりますが、まだまだ、夏は続きます。皆様のご自愛を祈っております。

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