第115回 食物繊維と発酵
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これまで、味噌について解説を行って来ました。何度も書いて来たように、味噌は我が国が誇る発酵食品です。ここでは、食物繊維の健康効果とそれが発酵することにより、如何に効果が高まるかについて解説させて頂きます。なお、ここでは腸内での発酵については触れず、食品が発酵することによってより良い食物繊維となることについて書かせて頂きます。食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。現在、食物繊維単独の摂取で確認されている健康効果は3つあります。(1)コレステロール低下、(2)血糖コントロールの改善、および(3)便通改善(便秘と下痢)です。これらを簡単な表にしてまとめています(図参照;J Acad Nutr Diet. 2017;117:251-264)。
上記の1〜3のような健康効果を得るためには小腸では水溶性食物繊維の粘度が重要になります。粘性の高い水溶性食物繊維は、コレステロールの低下と血糖コントロールの改善に大きな効果を示しますが、粘性のない水溶性食物繊維 (イヌリン、フラクトオリゴ糖、小麦デキストリンなど) と不溶性食物繊維 (小麦ふすまなど) では十分な健康効果は得られません。また、大腸で便通改善を促すためには、大きい/粗い不溶性食物繊維粒子が腸粘膜を機械的に刺激すること、そして、ゲル形成した食物繊維が水と粘液の分泌を刺激することが必要です。
食品が発酵すると、そのままでは硬い障壁であった細胞壁や細胞膜が破れて、細胞の中にある栄養成分(ここでは食物繊維)が露出され易くなります。また、ヨーグルトやパンの発酵で分かるように、発酵が進むにつれて粘性は高まります。つまり、発酵は食物繊維を量的にもまた質的にもより良く摂り得る処理方法なのです。あなたの食生活へもっと発酵食品を活用しましょう!