第117回 発酵物の効果 -焼酎残渣油の脳保護-
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COVID-19も感染法上の5類に移行しました。本当の意味でのアフターコロナがこれから始まります。前を向いて生活したいですね。今回は、発酵食品としての焼酎の脳機能への効果について解説させて頂きます。焼酎は、元々は東南アジアから渡ってきたアルコール飲料ですが、我が国で独自の進化を遂げて、現在では、世界的にも日本特有の飲料として認知されています。
芋焼酎は糖度の高い芋を発酵させ、その後に蒸留して製造します。その蒸留の時の残渣は栄養豊富で高い機能性を有します。今回の研究ではこの残渣の中の油を使用しています(J Biosci Bioeng. 2023 Jan;135(1):54-62)。動物実験ではアルツハイマー廟の原因物質とされているアミロイドβ25-35を脳内に投与すると投与された動物は異常行動を起こすようになります。この動物(この研究ではマウス)に上記の残渣油を15日間、経口投与しました。行動観察するためのY字迷路モデルを使った実験では、残渣油の摂取により異常行動は大幅に減少しました(図参照;図の一番右のバーをご覧下さい)。ここには示していませんが、残渣油はアルツハイマー病でアミロイドベータタンパク質の沈着を悪化させると報告されている分子S100a9およびPtgs2の発現を減少させることも明らかにされています。これらから、アミロイドベータタンパク質を投与されて異常行動を起こすようになったマウスの短期記憶障害を焼酎の残渣油は改善する可能性があることが分かりました。発酵によって、脳を正常化させるような物質が生み出されています。私たちの食生活にももう少し発酵食品を足したいですね。