第119回 プロテインと肺炎 ~日本の研究~
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近年、我が国でもフレイル(要介護状態の事前段階)やサルコペニア(老年期の筋肉減少)という言葉が聞かれるようになりました。前者は日本老年医学会が、後者はThe American Journal of Clinical Nutritionという著名なアメリカの学術誌が提唱しました。これらの言葉に代表される身体の筋肉量はタンパク質で出来ています(これ以降は、プロテインと言います)。身体を鍛えている人は運動の効率性を上げるために主にホエイプロテインを摂取しています。プロテイン基本は、体重1kgあたり1gですが、年齢が上がって、腎臓機能が弱まると、この体重1kgあたり1gは腎臓に負荷がかかり過ぎるため、体重1kgあたり0.8gとするのが良いとも言われています。
日本がん研究センターは日本人のプロテイン摂取量と健康との関係を調べました(Am J Clin Nutr. 2022 Mar 4;115(3):781-789)。ちなみに、総プロテイン摂取量と全死因死亡率とには関連がありませんでした。プロテイン摂取量と関連があったのは肺炎による死亡率でした。ご存知のように、肺炎は高齢者にはしばしば起こります。研究は、83,351人の日本人(男性 37,652 人、女性 45,699 人)で行われました。約18.4年間の研究期間中に、990人(男性634人、女性356人)が肺炎により死亡されました。これを解析すると、総プロテイン摂取量が増えると、女性の肺炎死亡率は低下しました(図参照)。ただし、男性では関係ありませんでした。また、この研究では、動物性プロテインと植物性プロテインとに分けても解析を行いましたが、少なくとも肺炎死亡率に関しては、動物性も植物性も関係なく、とにかくプロテインを摂ることが重要だと結論づけられました。