コラム

第120回 酸化とがん

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    8月は台風6号、7号が立て続けに日本列島を襲いました。被災なされた皆様に心よりお見舞い申し上げます。今月は活性酸素とがんの関係です。私たちの周りには身体の中に活性酸素を発生させる要因がたくさんあります。有名なのがタバコや紫外線ですが、私たちの身体に良いと思われている運動や薬も実は活性酸素の原因となります。
     酸化とがんの関係は、がんの観察から始まりました。がん細胞を調べると、普通の健康な細胞よりもたくさんの活性酸素が見つかったのです。この活性酸素は、腫瘍(がん)形成促進シグナルを強め、がん細胞の生存と増殖を高めることが知られています。そして、遺伝子(DNA)の損傷と不安定性を増す可能性があります。一方で、活性酸素は腫瘍(がん)形成促進シグナルを弱め、がん細胞を殺す作用を示すことも報告されています。つまり、活性酸素は状況により正反対の作用を示すのです。それでも狡猾ながん細胞は、周囲の活性酸素を消し、活性酸素に強い抗酸化タンパク質を作り出します。加えて、腫瘍形成促進シグナルを維持し、がん細胞を殺そうとする作用に耐性を持たせます(Seminars in Cell & Developmental Biology 80 (2018) 50–64)。このことは活性酸素が癌治療の潜在的な標的であることを示しています。図は活性酸素が身体の中でどのように作られ、作用するかについて示したものです。赤字は、我々の身体が持って生まれた活性酸素を消す酵素です。これらの酵素が元気で、正常に働いている若い時には、がんはなかなか出来ません。一方で、これらの酵素は40歳を境に急激に減ってしまいます。従って、40歳以上になると、抗酸化と向き合う必要があるのです。

    仕切り線

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