コラム

第124回 認知症と音楽療法

一覧へ戻る

  • sn

    現在、多くの音楽療法が試行されています。音楽を聴くと言う受動的行為だけでなく、能動的に音楽を奏でたり、歌唱を行うことにより心身の健康をもたらそうとするものです。そのような中で、超高齢化社会の到来で大きな社会課題となっている認知症について音楽療法の効果を実証しようとした研究があります(Aging & Mental Health, 2013,17(6), 667–678)。この研究は介護施設で暮らす中等度/重度の認知症患者の興奮(暴力的行為を含む)に対する個別の音楽療法の効果を調査し、向精神薬の投薬と生活の質への影響について明らかにすることを目的としました。試験方法としては、認知症の参加者42人がランダムに交代する形で6週間の個別音楽療法と6週間の標準治療を受けました。これをクロスオーバー試験と言います。図に示すように、評価項目として興奮(精神状態検査、興奮頻度、興奮破壊性)、生活の質(国際劣化スケール、スタッフ支援レベル、生活の質)、および向精神薬の投薬量(このグラフには示しませんでした)が含まれます。その結果、認知症患者の興奮は標準治療中に増加し、音楽療法中に減少しました。また、向精神薬の処方は、音楽療法中よりも標準治療中の方が大幅に増加しました。音楽は身近な中枢神経刺激行動です。効率的に利用しましょう。

    仕切り線

一覧へ戻る

トップに戻る