第126回 甘酒と健康
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寒さと共に、春の到来を少しずつ感じられる如月です。この季節、梅などを観に行くとよく甘酒が売られています。個人的なことですが、子どもの頃は甘酒の美味しさがよく分かりませんでした。しかし、齢を重ねた現在では、軽い甘みがクセになってしまっています。さて、私のように冬のイメージが強い甘酒ですが、俳諧では“夏”の季語になっています。飲む点滴と呼ばれる甘酒は夏バテに最適だったのかもしれませんね。この甘酒は日本独自のもので海外にはありません。甘酒には2種類あり、(1)麹から作られた糀甘酒と、(2)日本酒醸造の副産物である酒粕から作られた酒粕甘酒です。糀甘酒の甘みは、麹菌に含まれるアミラーゼによって分解されたデンプンに由来するグルコースによるものです。一方、酒粕甘酒には砂糖が加えられています。甘酒の主成分は発酵によって生じたブドウ糖とショ糖ですが、その他にも300種類以上の成分が含まれています(図参照;(J Fungi (Basel). 2021 Jun 10;7(6):469)。糀甘酒にはオリゴ糖やエルゴチオネインが、酒粕甘酒にはレジスタントプロテインやα-エチルグルコシドがそれぞれの甘酒の特徴的な成分として含まれています。両者には肌の保湿を促すグルコシルセラミドなどの一般的な成分も含まれます。これらの成分の機能性としては、抗疲労、排便、皮膚バリアなどの作用があることが知られています。 特に、どちらの甘酒も便通改善効果がよく研究されています。これらの機能は1日あたり約100mLの摂取により得られますが、この量は血糖値や体重増加に影響を及ぼさないことがヒト臨床試験で明らかになっています。身近な発酵物として甘酒に注目したいですね。