コラム

第129回 認知症と余暇活動

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  • sn

    この5月の初旬に、厚生労働省から認知症患者数の最新統計値が発表されました。その統計値によれば、2022年の約443万人から、2040年には約584万人に増加するようです。増え続ける認知症は私たちに漠然とした不安を感じます。もちろん、昨年末から使用できるようになったレカネマブ(エーザイ)などの新薬も希望を与えてくれますが、これらは認知症の症状が出て初めて使用できる薬です。事前に予防したいという願いもあり、いろいろな生活習慣が提唱されています。しかし、その中には科学的に効果が検証されていない生活習慣もあります。それについては、世界的に著名な学術雑誌に研究が発表されています(N Engl J Med. 2003 Jun 19;348(25):2508-16)。この研究では認知症を患っていない75歳以上の対象者469人を対象に、余暇活動と認知症リスクとの関係を調べた。登録時に様々な余暇活動への参加頻度を調査し、1週間あたりの活動日数を測定単位とする認知活動と身体活動の量を測定しました。追跡期間は平均5.1年で、124人の対象者に認知症が発症した(61人がアルツハイマー病、30人が血管性認知症、25人が混合型認知症、8人がその他のタイプの認知症)。解析の結果、図に示すように、余暇活動の中で、ボードゲーム、読書、楽器演奏、ダンスは認知症リスクの低下と関連していました。残念ながら、我が国でしばしば試みられているクロスワードパズルやお友達との会話、散歩などは認知症には効果が薄いと判定されています。しかし、楽しく生きることは認知症の進展とは違った側面です。日頃の楽しみに加えて、これらの余暇活動もひとつ、ふたつ加えてみてはいかがでしょうか。

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