第130回 農薬についての考察
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梅雨入りの便りが続いています。この梅雨が明けると暑い日々が続きます。気象庁の発表によれば、この100年で平均気温は0.76℃上昇しているようです。私たちが暑いと感じると同様にヒト以外の動物や植物も気温を敏感に感じています。その結果、これまで本州以南でしか採れなかった作物が北海道でも栽培できるようになっています。一方で、これまで東南アジアでの存在が確認出来なかった植物の病気や害虫が日本で見つかるようになっています。これに対して、収穫量を確保するために、従来よりも大量の農薬が使用されるようになってきました。
図の左側には農薬を使用しなかった場合の減収率を示したものです。米や小麦は農薬を使用しなかった場合の減収率は30%前後になりますが、林檎や桃は農薬がなければほぼ採れないことになり、農薬が農業にとって重要な存在であることが分かります。一方で、農産物に残留した農薬は、農家の人たちだけでなく、消費者全般の人々の健康にとって脅威となります。人間は、食品、皮膚、吸入など、さまざまな経路で農薬に曝露します。2019年以降の農薬残留物の人間への影響に関する研究について、調査が行われました(Molecules. 2021 Jun 16;26(12):3688)。
この研究では直接的に農薬が身体の中に入ってくるルートと食品などを通して間接的に農薬が入ってくるルートに分類できます。特に、後者に関してはたくさんの研究が行われています。その研究対象は図の右側のように野菜が主なものですが、ミツバチに関するものもたくさん行われています。蜂蜜には農薬が濃縮される場合もあるためです。私たちは農業に欠かせない存在になっている農薬にも注目していきたいですね。