コラム

第131回 家庭菜園とがん患者

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  • sn

    梅雨の最後に各地で激しい雨になりました。皆様にはお変わりありませんでしょうか?さて、生活習慣(運動や食事など)と発病との関係はここ半世紀の医学界のテーマでした。しかし、近年では、病気にかかった後の生活習慣をも研究がなされるようになりました。今回は家庭菜園を行っているがん患者さんを対象に研究が行われました(JAMA Netw Open 2024 Jun; 7(6): e2417122)。家庭菜園をやっているがん患者さんとやっていないがん患者さんについて食事、運動、身体機能、その他について比較を行いました。
     ちなみに、日本人の22.0%が何らかの形で、家庭菜園で野菜などを作っています。これはアメリカ人の5%を大きく上回っています。日本人は自分で野菜や果物を栽培するのが好きなのですね。狩猟民族と農耕民族の遺伝子の違いかもしれません。さて、この研究ではアメリカのアラバマ州のがん患者(5年生存率が60%以上であるがんが対象)6646名が登録され、その中からこの研究の条件に合致する381名が最終登録されました。これらのがん患者を2つの群に分け、半数のがん患者には1年間、家庭菜園を営んで頂き、別の半数のがん患者にはそのまま過ごしてもらいました。その結果、がん患者は、家庭菜園を営むことで、野菜や果実の摂取が増え、運動能力が高まることが分かりました(図参照)。
     人はがんを罹患するとがんと向き合うだけでなく、がんを抱えた新たな生活にも向き合わねばなりません。がんになると何事にも消極的になりがちですが、家庭菜園のような身近なものでも積極的に取り組むことにより、食生活が改善し、運動機能も維持できることが分かったのです。

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