第133回 クロスワードパズルは頭を良くするか?
-
処暑を過ぎましたがまだ蒸し暑さが残っています。皆様の夏の疲れが残りませんようにお祈り申し上げます。
今月、アルツハイマー病の治療に関する本を出版しますが、この検討中に認知障害予防にクロスワードパズルが良いのか悪いのかが討論になりました。認知障害への効果は未だに決着がついていませんが、これまでの研究では学習にクロスワードパズルを導入すると点数が高くなり、その知識が保持される(忘れられにくい)ことは分かっています。これまでの研究では、勉強にクロスワードパズルを使用すると勉強による疲労が軽くなることも分かっています。
今回紹介するのは、言語療法士を目指す83名を対象にした研究です(J Adv Med Educ Prof. 2021 Apr;9(2):102-108)。この研究では学生を2つのグループに分けて、半数はクロスワードパズルを組み合わせた教育方法を受け、半数は古典的な教育方法を受けました。試験は、学習前、学習直後、そして学習後1ヶ月に行いました。結果は図に示すように、どちらの教育方法も、学習後の学生の知識レベルは大幅に向上しました。そして、両方の教育方法を比較した場合、クロスワードパズルを組み込んだ教育方法は学習直後も学習後1ヶ月後でも古典的な教育方法よりも統計的有意に高得点を取りました。なお、大事なことですが、クロスワードパズルを組み合わせた教育方法は学生の満足度も古典的な教育方法よりも高いことが分かっています。私のような古い世代は、勉強は「忍耐」でしたが、現代は「楽しさ」も必要なのかもしれませんね。