第135回 気候変動は作物にも影響を与える
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各地の文化祭や学園祭に呼ばれることが多くなりました。お話しするのは「食と健康」ですが、先日、高校生から「地球温暖化は食生活にも影響を及ぼすのですか?」と質問を受けました。地球温暖化が食品の栄養に影響する有名な論文があります。Natureという世界で最も有名な学術雑誌に10年前に発表されました(Nature. 2014 Jun 5;510(7503):139-42)。この研究は亜鉛と鉄に関係します。実は、私たちの身体の亜鉛と鉄の欠乏は、既に世界的な問題となっています。なんと、推定20億人が亜鉛と鉄の欠乏症に苦しんでおられます。現在、世界の人口は82億人ですから、4人に1人が亜鉛あるいは鉄の欠乏症なのです。これらの人々のほとんどは、亜鉛と鉄を主に穀物と豆類に依存しています。この研究では、穀物と豆類は、今世紀半ばに予測される大気中のCO2濃度の上昇によって、作物中の亜鉛と鉄の濃度が低くなることを報告しています(図参照)。なお、CO2濃度だけでなく、PM2.5濃度などによっても作物の栄養が変わることも報告されています。これから生じる気候変動に備えて、私たちは作物の品種改良や食生活の改善などを企図せねばなりませんね。
最後になりますが、この亜鉛や鉄の不足は、小学生の頃から始まる注意欠如・多動症(ADHD)と大いに関係していることが分かっています。実際には、亜鉛、鉄の他にマグネシウム、銅、セレンが重要と報告されています。