コラム

第1回人間の身体

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    慶應義塾大学医学部・教授(化学教室)の井上浩義です。本号から健康に関するコラムを書かせて頂くことになりました。1回目の今回は、人間の身体についてです。
    人間の身体は、「細胞(さいぼう)」と呼ばれる小部屋の集まりです。この細胞は、赤ちゃんの時は約3兆個ですが、大人になると約60兆個に増えます。60兆個もの部品(細胞)が集まって、機械(身体)を作り上げているのですから、人間の身体の精緻さは当然のことかもしれません。この細胞は、皮膚によって覆われた細胞外液と呼ばれる液体の中に浸かっています。すべての細胞は、この細胞外液から酸素と栄養をもらい、細胞外液へ二酸化炭素と老廃物を出すことで生き続けることができるのです。人間の体液は、海水と似ているということをお聞きになったことはありませんか?実際には、全体の濃度(濃さ)は体液の方が薄いのですが、中に含まれるミネラルの種類や割合は非常に似ています。そのため、人間の祖先は海からやってきたと言われています。人間の身体の約60%が水分です(赤ちゃんは約70%、高齢女性は約55%)。この水分の約1/3が細胞外液で、約2/3が細胞内にあります(図参照)。従って、人間の身体は水を満たしたゴム風船を、また皮膚で作られた“海”に漂わせたようなものなのです。これで、水が人間にとって大事なものであることは分かって頂けると思います。

    仕切り線

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