第43回食事を考える(8)食欲
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近頃はすっかり耳にしなくなりましたが、「パブロフの犬」という食欲に関する試験をご存知でしょうか。犬にある音を聞かせた後に餌を与えます。これを数回繰り返すと音を聞かせただけで、犬は唾液を出すようになるという条件反射の実験です。
この実験からも、食欲が単なる栄養分を欲する身体の生理作用でないことが分かります。実際の身体の反応としては、図のように身体は空腹になると枯渇したエネルギーを補充するように食欲が出てきます(代謝要求系)。一方で、満腹になると過剰なエネルギーの摂取を抑制するように食欲が減ってきます(ホメオスタシス系)。この食欲の増進と減退を調整しているのが、血液の中のブドウ糖、脂肪、レプチンなどのホルモンなどです。
現在ではこれらの食欲調整因子は現在では約40種類ほど知られています。通常は、食事を始めて20分ほどでこれらの食欲調整因子が働いて満腹感が生まれ、空腹感が抑えられます。つまり、過剰に食事を摂りたくない人は、ゆっくり(20分以上掛けて)食事をすると普段よりも少ない量で満腹感が得られます。
なお、冒頭に述べたように、食事は単なる生理作用ではありません。料理の香りや色、形、光沢などが食欲に関係します。近年では、小児や高齢者の孤食(ひとりでの食事)が問題になることがあります。毎回は難しいかもしれませんが、みんなで楽しく食べる場も作りたいものです。