第49回運動を考える(6)
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ここまで散歩などの身体を動かす運動について書いて来ました。一方で、近年、バランス(姿勢の安定)を鍛えることが注目を集めています。
高齢化社会の到来によって転倒が生じる人、および安定した姿勢を保てない人が増加しています。
姿勢の安定は、静的安定と動的安定があります。しかし、どちらの安定も筋肉、腱(筋肉と骨を結びつけているもの)、関節、内耳(耳の鼓膜の内側)を使って実行されます。つまり、筋肉の伸び縮みの程度、腱にかかる張り、関節の位置、頭の傾き、頭の位置など(これを固有感覚と言います)の信号を脳で処理して姿勢は保たれます。
脳の中では、スポーツなどの高度な姿勢安定の場合には、大脳基底核と皮質のつながりが重要になり、座るや歩くなどのそれほど高度でない姿勢安定のためには脳と脊髄をつなぐ脳幹も関わってくることが分かっています。
なお、病院などでは、めまい、ふらつき、リハビリテーション等の目的で重心動揺計が使用されています。
近年ではこの固有感覚(特に、内耳の中の前庭系)を健康に保つことは、ストレス軽減および(おそらくですが)幸福感の増加に有効であると報告されています。この内耳(前庭系)が感情の調節を行う辺縁系と密接に連携して
いるためです(J Nat Sci Biol Med. 2017;8(1):11-15)。
この姿勢安定力を保つためのトレーニングについて次回以降2回に亘って書かせて頂きます。