第50回運動を考える(7)
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今月と来月は転倒しないためのトレーニング(運動)について書かせて頂きます。少し古いのですが、10年前の内閣府の調査では、60歳以上の方で、自宅内外で1年間に転倒したことのある人は22.4%にも上ります。その結果、5年前の2012年には7761人が転倒や転落で死亡されています。これら転倒や転落は、急激に高齢化している先進各国で問題となっており、その予防の為の研究も世界中で行われています。
転倒を減らしたり、転倒した時に上手に転ぶために様々な運動が考えられています。筋肉を増やす筋力運動、ゆっくりとした有酸素運動、身体を柔らかくする柔軟運動、平衡感覚を高めるバランス運動などが行われています。米国の研究では、上記の運動を行うグループを作って、10〜36週間、様々な運動を行って頂き、その後、2〜4年間追跡調査しました(この研究をFICSIT研究といいます)。その結果、バランス運動は筋力運動や有酸素運動よりも効果が大きいことが明らかになりました(図参照;JAMA 1995: 273(17), 1341-1347)。
バランス運動としては太極拳、継ぎ足歩行、片足立ちなどが使用されましたが、その中でも太極拳は転倒リスクを約40%も減少させました。しかし、高齢者などにとっては太極拳もハードルが高い運動になります。そこで、我が国提唱されているのが、片足立ち運動です。1回5分程度、片足を上げ、これを週2〜3回行います。この時に、無理をせず、疲れたら何度でも足を下ろしましょう。運動はくれぐれも無理のないようにして下さい。