第51回運動を考える(8)
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前回は転倒を防止する運動、あるいは転倒しても出来るだけケガをしない運動について、転倒しないように筋肉をつけたり、柔軟体操で上手に転倒する訓練をするよりも、脳の平衡感覚を鍛えた方が効果的であることを書かせて頂きました。
近頃では身体のバランスは二重課題(デュアルタスクとも言います)を与えたトレーニングをすることによって身体のバランス向上効果が高まるという研究も進んできました。二重課題とは聞きなれない言葉ですが、2つのことを同時に行うトレーニングのことです。
例えば、片足を上げながら、勉強する。まっすぐ歩きながら、歌を唄う。もっと簡単に言うと、誰かと話しながら片足を上げるでも良いのです(ちょっと礼に反しますが)。これらによって、脳のバランス感覚が鍛えられます。
これら二重課題トレーニングの研究をまとめた論文(Clin Interv Aging, 2017, 12, 557-577)では、1480名の被験者について姿勢安定性への影響を評価した研究のうち87.5%が有意な改善を示しました。ただし、二重課題トレーニングの急性効果に関する研究の30%は有意な改善を報告しましたが、50%は有意な減少を報告し、20 %は変化がなかったそうです(図参照)。
つまり、二重課題トレーニングは始めてすぐにはほとんど効果がないが、継続することで転倒防止などの効果が出てくるようです。なお、これらの二重課題トレーニングは高齢者には非常に効果的ですが、若者にはそれほどの効果はないことも報告されています。