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health seminar

井上教授の健康ゼミナール

著者紹介

慶應義塾大学医学部
井上浩義 教授

日本抗加齢医学会・評議員等も務める。慶應義塾大学ベストティーチャー賞7年連続受賞。文科大臣より化学コミュニケーション賞2012受賞。「えごま油で健康になる!」など著書多数。テレビ・雑誌等でも活躍中!株式会社フランシュエット顧問。

第136回

今、注目のNMN

今回は注目を集めているNMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)について少し書かせて頂きます。
NMNはビタミンBの一種で、ブロッコリーなどにも微量ですが含まれています。このNMNは高い抗酸化作用を示すため、健康寿命が延びることが期待されています。今回紹介させて頂く研究では中年の健康な成人80名がプラセボ(偽薬)、300 mg、600mg、または 900 mg の NMN を 1 日 1 回経口摂取しました(Geroscience. 2023Feb;45(1):29-43)。NMNは身体の中に入るとニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)という補酵素になりますが、血中NAD濃度は、プラセボあるいはベースラインと比較して、30日目と60日目にすべてのNMN投与群で統計的に有意に増加しました。この時にも安全性に問題はありませんでした。さらに運動能力も試されました。これは6分間にどのくらい歩くことができるかの試験になります。歩行距離の増加は、30日目と60日目の両方でプラセボと比較して、300 mg、600 mg、900 mgのグループで統計的に有意に大きくなりました(図参照)。最長歩行距離は600 mgと900 mgのグループで測定されましたが、600mgと900mgの間に差はありませんでした。結構な運動能力の向上ですよね。この他にも試験がなされていますが、いずれも有効性が確認されました。ただ、600mgと900mgの摂取の間に差は見られず、1日の摂取量は600mg程度が目安になるのかもしれませんね。